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『探究型読書』の「はじめに」を一部、公開します

編集工学研究所は8月3日、これまでにない新たな読書の方法を提案する書籍『探究型読書』をクロスメディア・パブリッシングから発売します。著者の思考モデルを借り、短時間で高速の情報編集を目指す本の読み方を豊富な事例をもとに解説しました。

 

このコラムでは、『探究型読書』の「はじめに」から一部、文章を抜粋してご紹介します。

 

『探究型読書』(編集工学研究所、クロスメディア・パブリッシング)|amazon.co.jp

 


 

人間が幼児の時に備えていた眼差しの復興、ものや事象の本質をまっすぐ捉えるための力を思い出してもらうために編集工学研究所は『探究型読書』を開発しました。しかし、なぜ、「認知の改変」を目指すメソッドに本を活用しなくてはならないのでしょうか。

 

仕事の性質上、私たち編集工学研究所のスタッフは、日々、膨大な情報を収集、整理し、分析して、新しい価値を導き出すということをしているわけですが、情報の多くはいまだに本というパッケージに収められているため、本から情報を抽出し、自分たちの仕事のテーマに合うよう「編集」することが基本タスクとなっています。とはいえ、私たちと本との関わり方は、必ずしも知識を仕入れることだけにとどまりません。クライアント企業の問題を解決したり、斬新なマーケットバリューを導いたりするためには、身近にたくさんある本を使って、あるいは本を“踏み台”にして、自分たちの予想もしなかった地点にまでジャンプする、言い換えれば、現状の認識に相転移(ある系の相が別の相へ変わること)を起こす必要があります。私たちはそのための道具としても本を捉えているのです。

 

『探究型読書』では、自分の思考を立ち上げる契機として、本の存在を意味づけています。本(特に目次)を活用し、自分の思考にバリエーションをもたらす目的で、著者の視点を借ります。慣れ親しんだものの見方に自分の意識だけで揺さぶりをかけていくのは簡単なことではありません。自分のものとは明らかに異なる視点を取り入れて対象を観察したり、これまでにない斬新な思考を立ち上げるためには、強力な「きっかけ」や「支え」が必要です。その「きっかけ」や「支え」が私たちにとっては本なのです。

 

「VUCAの時代」(Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧))と言われて久しいですが、まさに現在は「どこかにある『答え』を探して旅をする時代」ではありません。まだ見えていない問題や予想外の課題を、まずは仮説ベースで提案し、現実と調整しながら、手探りで解決の道を探っていくアプローチが求められる時代です。そんなややこしい時代に『探究型読書』が少しでもお役に立てれば幸いです。

 

(『探究型読書』の「はじめに」から抜粋)

 

谷古宇浩司(編集工学研究所 クリエイティブ・ディレクター)

 

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