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『才能をひらく編集工学』本日刊行!「はじめに」を公開します。

『知の編集工学』『知の編集術』(いずれも松岡正剛著)から20年、編集工学研究所所長・松岡正剛の方法知をこれからの時代に継ぐ一冊『才能をひらく編集工学』(安藤昭子著)を刊行いたします。

編集工学の核となる「方法」や「見方」を、「世界の見方を変える10の思考法」として、演習を交えながら紹介。こちらでは、本書の「はじめに」を公開いたします。

 

才能をひらく編集工学

 

『才能をひらく編集工学 世界の見方を変える10の思考法 』安藤昭子著
(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020/8/28) -Amazon

 

はじめに(『才能をひらく編集工学』より)

 

 変化は世の常ですが、2020年に入り、かつて経験したことのないスピードと量であらゆる環境変化が押し寄せています。新型コロナウイルス感染症による世界的なクライシスの中、3年の変化が3ヶ月で、10年の変化が半年で起こる時代に突入しました。感染症だけではありません。気候変動も国際情勢も、未体験ゾーンが常態になっているような昨今です。

 

 身につけてきた方法論や受け入れてきた世界像に、一斉に見直しを迫られている。授業や会議がオンラインでつながることの可能性は、なにも自粛期間中にはじまったものでもないのですが、有無を言わさぬ環境変化の中で、そもそも学校とは何か、会議は誰のためか、オフィスはなにをするところなのか、都市の機能とはいかなるものか、はたと立ち止まって考えざるを得ない課題が山積みになりました。「とっくにすませておくべきだった宿題」が、手つかずのまま机の上に並んでいる夏休み最終日のような状況です。

 

 ここから先、変化はさらにスピードを上げるのでしょうか。それとも本当は、何も変わりはしないのでしょうか。好むと好まざるとにかかわらず、変化はいたるところで啐啄同時になっていくように思います。「啐啄同時」とは禅の言葉で、「啐」は鳥の雛が卵を内側からつつくこと、「啄」は親鳥が外側からついばむことを指します。この「啐」と「啄」がぴったりあったときに、殻が破れて雛が生まれる。そこから転じて、本来は悟りや学びの導き方のあるべき姿として用いられる言葉です。

 

 いま外側から殻をつつくのは、子の誕生を願う親鳥とは限らず、無慈悲な外圧かもしれません。それでも、いたるところで殻は破れていくでしょう。恐る恐る顔を出すのは、「見て見ぬ振りをしてきた問題」かもしれませんし、「生まれ出ることを待ち望んでいた可能性」かもしれません。

 

 本書は、誰の中にも潜んでいる「編集力」を目覚めさせ、個人としての、あるいは集団としての才能を惜しみなく解放することを目指すものです。押し寄せる変化を味方につけて、自ら殻を破りにいく。「編集工学」は、そのプロセスのすべてを強力にサポートするものです。

 

 第1章「編集工学とは?」では、「編集工学」のごくごく基本的な考え方を概観しています。「編集」とは何か、なぜ「工学」なのか。そして本書のタイトルでもある「編集工学」と「才能」の関係について解題します。

 

 第2章「世界と自分を結びなおすアプローチ」は、本書の背骨にあたる章です。混沌とした世界を生き抜く上で身につけたい力を10のアプローチで紐解いていきながら、編集工学の基本スタンスとなるものの見方や考え方を提示しています。あたりまえに見えている世界を、まっさらな見方で捉え直してみる。そのための技法や世界観を、情報編集の普遍的なプロセスを追うような構成で組み立てました。随所の「ミニ演習」で少し頭をほぐしながらお付き合いください。

 

 第3章「才能をひらく『編集思考』10のメソッド」は、第2章で獲得したパースペクティブを、いよいよ実践的なメソッドとして動かしてみる章です。「メソッドの紹介」「演習」「演習の解説」「第2章からのヒント」を1セットとして、10のメソッド演習を体験いただけます。習得したメソッドは、どんどん仕事や生活の中に取り入れてみてください。きっと見慣れた日常の景色が変わってくるはずです。

 

 第4章「編集工学研究所の仕事」では、編集工学が実際にどのような価値を提供しうるのか、編集工学研究所の仕事の現場を紹介することを通して、第2章や第3章の実践的な応用事例を示しています。事業やプロジェクトのヒントにしていただける要素もあるでしょう。

 

 最後の第5章「世界はつながっている」は、編集工学の世界観をわたしなりの観点から描き出そうとする試みです。ここまで読み通していただくと、より立体的なイメージを伴って、第2章や第3章の実践知が立ち上がるはずです。

 

 第1章から第5章まで順を追って進んでいきますが、随所に関連する情報への参照ページを返し縫いをするように示しています。編集工学の理解を深めるタテ糸と、観点を広げるヨコ糸を織り合わせ、行きつ戻りつしながら一枚の大きな布が編み上がるようなイメージをもって構成しました。

 

 大切なことは、そこに読み手ひとりひとりに異なったイマジネーションの糸が入るということです。この本自体は、大量印刷されて同じ内容がコピーされますが、本書を介して編まれた布には、どれ一つとして同じ模様はないはずです。その仕上がりを楽しみに、まずは「編集工学とは?」から始めましょう。本書を読み終える頃には、きっと新しい世界が目前に広がっているはずです。

 

『才能をひらく編集工学』「はじめに」より


 

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