[AIDA]受講者インタビューvol.1 奥本英宏さん(リクルートワークス研究所所長)

受講者の声

目の前の課題の〝問い方〟そのものが変わっていく

確固たる正解がない今、ビジネスリーダーに求められているのは、新しい社会を構想する力だ。そうした人間としての底力を鍛えるために自らの指針となる価値軸や世界像を「壊し・肖り・創る」場が、Hyper-Editing Platform[AIDA]だ座長の松岡正剛と6人のボードメンバー、受講生(座衆)が、それぞれの課題や論点を持ち寄り、膝を交えて対話し、知を創発する。

この「知のプラットフォーム」に、前身のハイパーコーポレートユニバーシティ[AIDA]時代の2012年から参加しているのが、リクルートワークス研究所所長の奥本英宏さんだ。

奥本さんは企業の人事制度、人材評価、人材開発、組織開発全般のソリューションに従事してきた「人材」のプロフェッショナルである。

「人はいかにして学び成長していくのか?」という「問い」をビジネスの最前線から一貫して投げ続けている奥本さんの目に、[AIDA]という場はどう映っているだろうか。そしてなぜ受講を続けているのだろうか。

 

奥本英宏(株式会社リクルートワークス研究所所長)

1992年、立教大学卒業後、リクルートマネジメントソリューションズ(旧社名:人事測定研究所)に入社。以後、一貫して人材・組織開発に取り組む。リクルートマネジメントソリューションズ代表取締役社長などを経て、2020年より現職。[AIDA]には、2012年から参加。同講座で松岡正剛校長の「編集工学」に魅せられ、イシス編集学校に入門し学ぶ。同校では、師範代・師範を担当した。

 

AIDA]は課題の問い方を変えていく

 

――奥本さんは、前身のハイパーコーポレートユニバーシティ[AIDA]時代から含めて、今回で[AIDA]に4シーズン参加されています。これまでを振り返っていかがですか。

奥本:あいだ(AIDA)から世界を見る、という方法は一貫して変わっていないのですが、「情報と生命のAIDA」をめぐったり「自己と他者のAIDA」を探ったりと、毎シーズン、ゲストも切り口も違い、新たな問いが生まれます。正解がない課題ばかりで一筋縄ではいかず、常に苦しんでいますが、最終的には自分の思考が自由になる感覚を持てるんです。

――AIDAと他の講座の一番の違いは何でしょうか?

奥本:通常の研修は、外側に課題が設定されます。例えば、マーケティング力の向上という課題を与えられ、参加者はその答えを外部の知見やノウハウを学習して身につけていこうとする。効率的に課題の正解を出すことが求められるのが、研修のスタンダードです。ところが[AIDA]は、そうではありません。外側に用意されている既成概念を揺さぶり、目の前の課題の「問い方」を変え、内側にある自らの固定概念を再構築するというような体験です。

 

答えのない問いに向かうための学びの仕組み

 

奥本:例えば、シーズン3のテーマは、「日本語としるしのAIDA」でした。いったい、日本語としるしを考えることが、ビジネスにどう繋がるのかと疑問を感じる人もいるかもしれません。講義では、「九相図」や「無常」など、普段のビジネスシーンでは決して登場しないワードが飛び交いました。これは逆にいえば、私たちの思考からこうした日本語の持っている視点や思想が抜け落ちているということを意味します。日々、自分は日本語をつかって思考していますが、考える出発点から、日本語が持ちうる可能性がそぎ落とされてしまっていたのです。

シーズン3では講義で登場した「枕詞」などのワードを手がかりに、日本語としるしのおおもとの捉え直しが求められました。「枕詞」は、「ひさかた」と歌えば、次に「空や天」といったイメージやしるしが引き出されます。古代や中世の日本人は、言葉が持つ多様なイメージを思考や表現のデータベースとして使っていました。

日本社会に課せられている問題の解決に向かうには、こういった日本語の本来の持ち味を活かしながら、想像力を高めて解決の糸口を見つけていく必要があるのだと感じ始めています。

 

――[AIDA]によって問いが変わり、思考の仕方が変わったということでしょうか。

奥本:その通りです。そもそも毎回の講義が、安易に課題を捉えさせてもらえない。ボードメンバーやゲストの見方が、自分の課題の捉え方を揺さぶります。そうやって予期せぬ問いをなんとか繋いで思考しようとする渦中に、新しいアプローチが生まれたりする。

さらに座衆(受講生)は、講義と講義の間、オンライン上で「連(れん)」と呼ばれるグループに分かれ、それぞれの師範代(コーチ)のもと、課題に取り組みます。仲間と同じ課題に取り組み、互いの問題意識や気づきを共有することで、それぞれの思考がさらに深まります。

複雑な課題に向かうときには常に自分の考えを仮の答えと置いて、対話を通じてブラッシュアップし続けることが重要です。答えのない問いに向かうことは簡単ではありませんが、[AIDA]にはそれを支える仕組みが用意されている。

 

▲シーズン2 第3講ではライブストリーミングチャンネル「DOMMUNE」を、AIDA一行がまる2日間ジャック。奥本さんの「自分史クロニクル」も番組として配信された。ボードメンバーの田中優子氏(江戸文化研究)が横から質問を投げかける。

 

「世界像」を刷新する創発の場

 

――今シーズンの[AIDA]で、印象に残る発言を教えて下さい。

奥本:松岡座長が第4講でおっしゃった「日本は2が1だった」という指摘に思考が揺さぶられました。「日本では最初から“対”で始まっている。絶対的な1がなく、デュアルとしてある。例えば、アマテラスは太陽神なのに絶対的な1として存在してない。アマテラスとスサノオが対になっている」というものでした。

私たちは普段、どうしても物事を二項対立的にとらえがちです。例えば、ポストコロナにおける在宅リモートとリアル出社の問題もそうです。「どちらがいいか」という二項対立的議論に集約してしまいますが、この2つを「対=1」として考えたらどうでしょう。リモートワークとリアル出社をひとつとして考えれば、「人が集まる意味」を問う本質的な議論になります。日本語にみられる“対”の優位は、さまざまな課題の解決に向けたアプローチのひとつとなり得る。この気づきは、今シーズンの大きな収穫のひとつです。

 

――[AIDA]で学ぶ体験とは、どんなものでしょう?

奥本:教養を学ぶとか、新しい視座や視点を獲得するとか、そういったことではないんです。毎シーズンのテーマに肖りながら、深く深く思考して、問い自体を変え、自分が依って立つ「世界像」を刷新していく。こうした学びの場は、他にはありません。社会的なリーダーを目指す方、会社や社会を変えたいと思っている方、知を創発し合う場を求めている方にこそぜひ、[AIDA]の門をくぐってほしいなと思います。

▲「問いを編み出し、問いで周囲を巻き込んでいく力を、[AIDA]では一座でともに身につけていきます。社会的リーダーを目指す方は、一度体験してほしいです」(奥本さん)

 

[AIDA]受講者インタビュー

vol.1 奥本英宏さん(リクルートワークス研究所所長) 
vol.2 中尾隆一郎さん(中尾マネジメント研究所代表)
vol.3 安渕聖司さん(アクサ・ホールディングス・ジャパン株式会社代表取締役社長兼CEO)
vol.4 山口典浩さん(社会起業大学・九州校校長)
vol.5 土屋恵子さん(アデコ株式会社取締役)
vol.6 遠矢弘毅さん(ユナイトヴィジョンズ代表取締役)
vol.7 濱 健一郎さん(ヒューマンリンク株式会社代表取締役社長)
vol.8 須藤憲司さん(Kaizen Platform代表取締役)

 

 

 

 

 

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