Season 2   第5講

メディアと市場とデジタルと

2022.2.12

 Season2「市場とメディア」の第5講は、喫緊に迫る話題として、監視資本主義、ビックテック、メタヴァースを取り上げる。ゲストは、デジタル・メディアの専門家、池田純一氏だ。

つまりわたしたちは、数世紀にわたる近代化の物語と、
それを阻もうとするここ数十年の経済的暴力との衝突のただ中に生きているのだ。
ーショシャナ・ズボフ『監視資本主義−人類の未来を賭けた闘い』

 90年代なかばにインターネットが誕生し、わずか四半世紀の間にサイバー空間は凄まじい勢いで人間社会を覆っていった。

第5講の課題図書である『監視資本主義』(ショシャナ・ズボフ)は、ビッグテックが先導するデジタル資本主義社会の行末を照らし出し、半ばゾッとする読後感を残した。

 第4講でたっぷりと向き合ったニコラス・ルーマンは、「経済のオートポイエーシスは、あらゆる経済的目的を超越している」と言った。AIDAボードの武邑氏は、「システムによる生活世界の植民地化」というユルゲン・ハーバーマスの言葉を引いて、システムに乗っ取られる現代社会の病理を指摘した。果たしてGAFAMは、私たちの想像力を植民地化することに成功したのだろうか。

 アメリカ、ビッグテック、SFエンターテインメント、これらの動向の先端を案内し続ける池田純一氏をゲストに、「人類の未来を賭けた闘い」に向けて想像力をフル稼働する一日となった。

●課題図書
『監視資本主義: 人類の未来を賭けた闘い』ショシャナ・ズボフ著(東洋経済新報社)

●プログラム
13:00〜 オープニング フラッグメッセージ
13:45〜 池田純一 ソロセッション
15:20〜 武邑光裕 AIDAボードレクチャー
16:00〜 情報の歴史セッション
16:15〜 池田純一 × 武邑光裕 × 松岡正剛 鼎談セッション
17:40~ 組間議
18:10~ AIDAセッション(全員参加)

シーズン2 第5講フォトレポート

講義の本棚

上段左から、課題図書の『監視資本主義人類の未来を賭けた闘い』(ショシャナ・ズボフ)、参考図書『巨大企業の呪いビッグテックは世界をどう支配してきたか』(ティム・ウー)。下段にはゲスト・池田純一氏の著書が並ぶ。『〈ポスト・トゥルース〉アメリカの誕生』、『ウェブ文明論』ほか。

 

オープニング フラッグメッセージ

AIDA]プロデューサー 安藤昭子(編集工学研究所専務取締役)

「いま世界で何が起こり、どこでどんな議論が行われているのか、水先案内人のようにご紹介されている池田純一さん。今日は、監視資本主義、アメリカ、メタヴァースをテーマに議論します」。プロデューサーの安藤が、池田氏を招きいれ、第4講が始まった。

 

池田純一 ソロセッション

デジタル・メディアの専門家 池田純一氏

池田純一のセッション「GAFAとアメリカン・スピリット」では、歴史と精神性を紐解き、さまざまなアメリカが浮き彫りになった。「法律とナラティブを重視するアメリカ」、「コーポレーションの種からなるエコシステムとしてのアメリカ」、「2016年の大統領選挙を機に左右逆転・上下反転したアメリカ」、「人類の巨大な実験場としてのアメリカ」。

「日本やEUではGAFAという言葉が浸透しているが、英米では、GAFAではなくビッグテックと言う。ビッグであることが重要なのであり、GAFAが徒党を組んでいるようには思っていない。アメリカの論点はビッグネスにある」。

 

武邑光裕 AIDAボードレクチャー

ボードメンバー武邑光裕氏は、デジタル監視社会とアドボカシー(権利擁護)を語った。

1980年代からデジタル社会環境を研究する武邑氏は、VRの意味が日本と欧米で異なることを指摘した。「今から33年前、日本ではバーチャル・リアリティーを仮想現実と訳してしまった。これにより仮想と現実の分断が加速した。本来どちらも現実なのだ」。

 

『情報の歴史21』セッション

武邑氏と『情報の歴史21』編集長の吉村によるセッション 

シーズンを通しての課題図書『情報の歴史21』。池田氏のソロセッションと武邑氏のレクチャーから鮮明に浮かび上がった「巨大企業による市場独占の歴史」を確認。1917年のクレイトン法(独禁法)の成立から崩壊、そして巨大合併が続々と起こった流れを辿った。

 

ゲスト・ボード・座長セッション

ゲスト 池田純一氏、ボードメンバー 佐藤優氏

ゲスト・ボード・座長セッションでは、問答形式でアメリカの見方が語られた。

池田氏は、アメリカの特殊性は、エマーソンの逸脱したキリスト教解釈が起点になっていると語る。「エマーソンの解釈から、各人が神から受胎した法人だという考えが生まれた。これが基盤となり、個人は横で繋がり、社会としては法律の下で進むという方法論が成立した」。

佐藤氏は、神学の視点から欧米の根本原理を語った。「ヨーロッパを形成している原理は、ユダヤ教・キリスト教の一神教原理であるヘブライズム。アメリカの中で、ヘブライズムをどう見るかが重要である」。

ボードメンバー 武邑光裕氏、田中優子氏

武邑氏は、20世紀のアメリカにおける社会変動の中で、最も革命的な出来事としてフリースクーリングを取り上げた。「フリースクーリングは、60年代のヒッピーの戦いから生まれた。現在起きている分散ドロップアウトの原型はそこにある」。

田中氏は、アメリカの背景にある重要な概念として道具主義を取り上げた。「ハンナ・アーレントは、道具主義は簡単に全体主義に転じると語った。道具主義の背景には監視資本主義があり、その価値観は産業革命の延長戦上にある」。

 

AIDAセッション

座衆がグループに分かれて議論する組間議を経て、全員参加で行われたAIDAセッション

この日最後となるAIDAセッションは座衆からの質問に、ゲスト、ボードメンバー、座長が答えるかたちで進められた。「個人情報一括管理によって国家と個人の関係は変化するのだろうか?」「監視資本主義は悪ではないのではないか?」など、企業人としての課題感が持ち出された。

 最後は身近に迫るメタヴァースの話題に。松岡座長はメタバースを考える上のキーワードとして「時空間」をあげた。「私たちはシステムやネットワークといった空間を支配することには強くなっているが、時間の支配は不足している。例えば、ドキュメンテーションのモデルには、有機体の生成や遺伝子がある。こうした時空を跨ぐモデルは、現代思想や社会思想には組み込まれていない。時間と空間が生命的に情報を持つために、メディアが機能していくべきだ。源氏物語やアーサー物語が外在化して伝えられてきたように、時空間を伴ったメディアをつくることが重要なのだ」。一人一人が時空間を伴ったメディアとして機能してほしいと座衆を鼓舞し、第5講は締められた

 

 

 

◀︎ 第4講 「オートポイエーシスな社会システム」 

第6講 「メディアと市場と私のAIDA ▶︎

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