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《鼎談》複雑性時代に問い直す、これからの学びと組織経営——AIDAネットワーキング会2025冬

年の瀬も押し迫った12月22日、Hyper-Editing Platform[AIDA](以下、[AIDA])の参加企業である株式会社パラドックスのラウンジに、各界を代表する経営者やビジネスリーダー約30名が集い、「AIDAネットワーキング会2025冬」が開催されました。

 

 

毎年[AIDA]に社員を派遣し、ご自身も2度受講したパラドックス社執行役員・内村寿之氏の乾杯で会はスタート。「ビジネスに閉塞感を感じている方も多いと思います。[AIDA]という場で違うアプローチを一緒に探していきたい」と語る言葉には、思想や日本文化といった「[AIDA]的なるもの」の社会実装を試みる「AIDAコンソーシアム」(2025年9月設立)のパートナー企業としての思いも込められていました。

 

 パラドックス社東京オフィスのラウンジ(左)。同社執行役員の内村寿之氏(右)。

 

和やかな歓談の後、[AIDA]受講生(以下、AIDA座衆)OBよりユニークな経歴を持つゲストお二人をお招きし、「複雑性時代に問い直す、これからの学びと組織経営」と題した鼎談を実施。その内容をお届けします。

 

 

◉鼎談ゲスト

安渕聖司氏(アクサ生命保険株式会社 代表取締役社長兼CEO)

[AIDA]座衆OBの集い「Hyper Club(ハイパークラブ)」の代表発起人。歌舞伎をこよなく愛し、発起人の会では河竹黙阿弥の弁天小僧にあやかった七五調の挨拶を披露するなど、常に座を盛り上げる話題の人物。

 

高﨑一氏(株式会社Kaizen Platform 取締役CFO)

ベンチャー企業のCFOとして経営の最前線に立ちながら、[AIDA]受講後に詩人としても活動を開始。2025年10月に初の詩集となる『東京情緒 はぐれがちなうつろいたちの三十六月』(コトニ社)を上梓。

 

モデレーター

安藤昭子(編集工学研究所代表取締役社長・AIDAプロデューサー)

 

[AIDA]は無限屋敷、自由になる場。「間論」と「詩集」と「商談」の関係

安藤:お二人にとって、ひと言で言うと「[AIDA]の体験」とは何でしたか?

 

安渕:「無限屋敷」のイメージに近いですね。「鬼滅の刃」の最新映画(無限城編)の、限りなく落ちていく、広がっていく、展開していく屋敷。動きながら次々と新しい風景が見え続け、自分自身も変化していく。あのイメージです。

 

高﨑:「自由になる場」ですかね。最初は知の激流に溺れるだけだったんですけど、日頃のビジネスの資本の論理といったものがすごく揺さぶられて、それは一つの考え方に過ぎないというところに身を置ける。そういう意味で[AIDA]は自由になる場でした。

 

安藤:「自由」というのは面白いキーワードですね。Kaizen Platformさんと[AIDA]の繋がりは、創業社長である須藤憲司さんがリクルート在籍時に[AIDA]を受講されたことに始まります。

 

高﨑:Kaizen Platformは須藤の中に[AIDA]の体験があったからできた会社です。これはもう間違いない。ベンチャー企業なので日々ストリートファイトみたいなことをやっていますが、そんな中でも遠くを見るとか、いろんな考えを持つ人と結びつかなければ先に行けない。それで会社として社員を派遣し[AIDA]を受講しています。

 

安藤:ベンチャー企業で上場もしていて、非常に速い流れの中で戦っていらっしゃる。そうした日常にありながら、[AIDA]では全く違う時間軸を体験されたと思います。高﨑さんは[AIDA]の最終レポート課題「間論(まろん)」で、「懐く(なつく)」という概念を軸に日本の情緒を論じられ、座長・松岡正剛の俳号を冠した「AIDA玄月賞」を受賞されました。これが後の詩作に繋がっていくわけですね。

 

高﨑:[AIDA]における最高賞をいただきながら何もしないのはあり得ないと思いましたし、田中優子先生([AIDA]ボードメンバー/イシス編集学校学長)からも「書き続けたほうがいい」と言われました。最初は間論の延長線上で書こうと思ったんですけど、日本の情緒や文化の底流にあるものを書こうとすると、論考やエッセイは何か違うように思えてきて、詩になっちゃいました。

 

高﨑一氏。ベンチャー企業のCFOでありながら詩人。

 

安藤:情緒は言葉を持たないから「象る(かたどる)」しかない、それで詩という形になったと以前にお聞きしました。3カ月で初稿を上げられ、本にすることが決まった。さらに驚いたのは、この詩集がビジネスの新たな接点を生んだことです。今日もいらっしゃっていますが、高﨑さんの[AIDA]同期の方がご自分の会社内で詩集を共有したところ、上司が感銘を受けられてKaizen Platformとの商談が始まったそうです。

 

高﨑:詩集で商談が始まるという、なかなか歴史的にも少ない事例だと思います(笑)。

 

「わからない」のパワー。刈り込まれたシナプスを再生する

安藤:安渕さんは10年以上[AIDA]に通い続けてくださっていますが、それだけのご経験とお立場にありながら、誰よりも最先端で学び続けるのはなぜでしょうか?

 

安渕:一つは、私自身が常にアウトサイダーとして次々に転職してきたことがあると思います。金融の中でも異業種に転職し、毎回ほぼゼロからの学び直し。学び続けることが働くことであり、生きることなんです。でも仕事だけだとどうしても狭まってくる。だから全く違ったものに触れに行くことで、無限屋敷のように違う景色が見えてきます。もう一つは、知らないことを知る力ですね。リーマンショックを経験しましたが、何が起こっているのかがわからない、その「わからない」ということがわかった瞬間から物事が動き始めたんです。

 

安藤:わからない状態がわかる、そのスタート地点に立つというのは大きいですね。

 

安渕:周囲にも「わからない」とちゃんと言えるようになります。よくわからないことは実はたくさんあると思いますが、誰かが勇気を出して「すみません、今言ってること全然わかりません」と言うと、それが新しいインプットになり違う議論が起きる。「わからないのパワー」はすごく強いと思います。

 

安渕聖司氏。アクサ生命保険株式会社 代表取締役社長兼CEO。歌舞伎をこよなく愛する。

 

安藤:「わからないのパワー」、いいですね。かつて松岡が「わかっただ、わからないだ、簡単に言うな」と座衆たちをピシャリとやったことがありました。[AIDA]のプログラムは講義を聞くだけでなく座衆も発言する場面がありますが、「ちょっとよくわかっていないかもしれませんが……」と皆さん口にしがちです。錚々たるメンバーの前ですからお気持ちはわかるのですが、そのエクスキューズに松岡は怒った。「そもそもわかったとは何だ。じゃあバラとユリの違いがわかるのか?」と。たかだか自分の中での「わかった」という基準なのですが、これを捨てるのが案外難しい。安渕さんには「わからなさ」に飛び込むときのお作法があるんですか?

 

安渕:[AIDA]で学んだことで言うと、AとBが全然違ったことのように見えていても、実はAは形を変えたBなんじゃないかとか、異なるものを引っ張ってきて結びつけることで、いったん刈り込まれたシナプスがもう一度増えてくるみたいなことが起きます。会社で仕事をしていると特化した回路がどんどん出来上がって効率的ではありますが、異質なものが入ってきたときに反応できない。それが[AIDA]の場では、「これって何?」がいっぱいやって来る。そうすると、これはそれと似ている、どこかで繋がっているといった別の回路ができて、レジリエントになってくる。[AIDA]を通じて、そうした類推力、アナロジーが鍛えられますね。

 

「わかる」ではなく「懐く」。ビジネスのOSを変える

安藤:AIDAは毎期「何かと何かの間(AIDA)」というテーマを掲げています。安渕さんが最初に受講された期は「神と仏のAIDA」(2016年開催)、高﨑さんは「型と間のAIDA」(2024年開催)でしたが、特に印象的だったことは何ですか?

 

安渕:最初のゲストで重信メイさんが来られたことですね。赤軍派の重信房子さんのお嬢さんで、イスラエルの秘密警察に狙われているので国籍もなく、本名も隠して暮らしてきた。そういう方が突然目の前に現れて、「こんな人が世の中にいるんだ」と衝撃を受けました。もう一人のゲストが青木健さんというペルシア史の専門家で、コーランの朗読を聞きながら「これはちょっと大変なところに来たな」と思いました。ものすごく刺激的で学びにもなりましたね。

 

高﨑:僕は第1講の事前課題が、「自分の記憶の中で日本を感じるものを述べよ」というものだったんですが、正直よくわからないなと思いました。僕は昭島という横田基地の近くの団地で育ったので、身近に日本的なものが全然なかったんです。

 

安藤:それがどこかのタイミングから、日本的なるものや日本の中にあるフラジリティ、情緒のようなものを相当掴まれていったと思うのですが、どこで変わったんですか?

 

高﨑:第1講はごちゃごちゃになって、第2講が万葉研究者の上野誠先生で、あの語りのパフォーマンスを見て「これはわかろうとしちゃダメだ」と強烈に感じました。切り刻んで分析する普段のやり方を止めて、「懐く(なつく)」感覚ですべて受け止めてみることを始めてからですね。合宿は京都と奈良でしたが、京都に行った時、この街って脆いんだなと感じて、奈良で大仏の足元に立った時には人間の心細さを奥深くまで思いました。それがグっと刺さっちゃって、日頃のビジネスでも見方が変わる感覚がありましたね。

 

安藤:ベンチャー企業のCFOとして資本主義の戦いのど真ん中にいながら、一方では刺さって抜けなくなったものを持ちながら活動されていて、高﨑さんは今年9月に設立した「AIDAコンソーシアム」にも真っ先に参加してくださいました。

 

モデレーターを務めた安藤昭子。編集工学研究所代表取締役社長であり[AIDA]プロデューサー。

 

高﨑:AIDAコンソーシアムの取り組みは、AIDA的なるものをどう社会に実装していくかというなかなか難しいものですが、同時にすごく価値があると感じています。とはいえ資本の論理からすれば、「それって綺麗事だよね」という部分はあります。その「とはいえ」をどうひっくり返せるか。ビジネスのOSを変えることにチャレンジする活動だと思っているので、僕自身にある[AIDA]で突き刺さったものと日々のビジネスの相克という、アンビバレントな感覚をぶつけていって、何か少しでも貢献できればと考えています。

 

遊ぶように働き、働くように遊ぶ。実は「儲かる」[AIDA]

安藤:高﨑さんがおっしゃった「とはいえワールド」。深いことを考えようとしても「とはいえ」という部分を私たちはどこかに持っています。これは[AIDA]の一座が抱える次なる課題ですが、安渕さんはプロの経営者でありながら、資本の論理も[AIDA]での学びも同じ重要度で捉えているようにお見受けします。その共存のさせ方、これから活躍していくビジネスパーソンの心持ちについて、何か思われるところがありますか?

 

安渕:私は遊ぶように働いて、働くように遊ぶのが一番いいと思っています。仕事は真面目にやるものだと思い過ぎると、どうしても力が入ってしまう。そこをどれくらいリラックスして、引いて、押して、離れて、近づいて、といったことができるか。たかが仕事、されど仕事で遊び心を持つことが大事です。全体を大きなプレイグラウンドに見立てて、好奇心をドライブとして精一杯使う。常に緊張している中からは何も生まれないので、それこそ時々詩を書いてみるとかですね。

 

安藤:つい先日、[AIDA]の課題締め切り日で、さすがの安渕さんも師走に向けて大忙しで間に合わないと連絡をいただいたんですが、それが漢詩のメッセージだったんです(笑)。何をするにもオシャレに遊ぶ姿は、私たちの憧れの大先輩です。[AIDA]はさまざまな立場の方が混ざりながら、座衆同士もお互いをモデルにしていろんな交換をし合っていく場です。高﨑さんもCFOで詩人という、新たに現れたモデルです。最後に今日この場にお集まりくださった皆さんにメッセージをいただけますか。

 

高﨑:[AIDA]に参加すると会社が儲かります(笑)。[AIDA]ボードメンバーの佐藤優さんに肖ってですが、費用対効果は無限大です。

 

安渕:すごい詩人ですね、ちょっと感動しました(笑)。[AIDA]はどんどん頭の中に新しいドアが開いて、その向こうに行くとまた何かが開いて、自分が拡張されていく感覚があります。仕事に集中するとだんだん狭くなってきますが、もう一度自分を広げてステージを変えるにはすごくいいと思います。一生読まないような本を読んで、会わないような人に会って、これを半年やると、刺さる人には刺さって詩人になる(笑)。そういう体験があってもいいと思うし、ぜひ仲間になってもらえればと思います。

 

安藤:毎期ご一緒くださる座衆の皆さんとのご縁が、主催する私たち編集工学研究所にとっても宝物でして、[AIDA]は一つの研修プログラムに留まらないものです。今日この場も「一座」として立ち上がったものですし、[AIDA]の世界はまだまだこれから広がっていくと考えています。本日はありがとうございました。

 

 


 

▶[AIDA]公式サイト:https://aida-eel.jp/

講座の仕組み、これまでの開催記録を詳細にご紹介しています。 

 

▶次期開講:

Season7の開講は、2026年10月(~2027年3月)を予定しています。

受講のお申し込みやお問い合わせは、[AIDA]公式サイトの「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。

 

お問い合わせ:

株式会社 編集工学研究所 AIDA事務局

TEL:03-5301-2211

Email:aida@eel.co.jp

HP:https://aida-eel.jp/

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