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「企業と人材」4月号に編集工学研究所・安藤が寄稿しました

 産労総合研究所が発行する「企業と人材」2021年4月号に弊社専務取締役の安藤昭子が寄稿しました。「『個』が際立つ時代の新しい学び(前編) 探究型読書[個人編] 編集的リベラルアーツと読書の関係」と題し、変化の激しい時代を生きるうえで「世界観」「価値軸」「編集力」や「編集的リベラルアーツ」がなぜ必要なのか、これらを育むための方法として「探究型読書」がいかに有用であるかを紹介しました。本記事では寄稿記事の要点をご紹介します(寄稿記事の全文は「企業と人材」2021年4月号でご覧ください)。

「企業と人材」2021年4月号の公式サイトはこちら



道なき道を行く時代に必要な地図とコンパス

 自分の価値観を随時更新していくことが求められる時代、人生の道筋を見極める上で必要な「地図」や「コンパス」となるのが「世界観」「価値軸」「編集力」です。


(1)「世界観」の把握:世界はどうなっているのか。自分はどこから来てどこへ行くのか。いま自分はどこに立っているのか。世界の中の自分という文脈で次の一歩を決めることができるようになります。


(2)「価値軸」の設定:不確実性の高い現代社会において、さまざまな分岐点に差し掛かった時の判断基準となるのが「価値軸」です。自分なりの倫理観を育みながら、独特の感性を磨いていくことも大切です。

(3)「編集力」の強化:先人が設けた枠組みや分類は、時には、前に進もうとする者の障壁になります。分野を跨ぎ、それらの新たな関係を発見していくために、あたり前のこととして受け入れられている前提を疑い、異なる角度からの視点を持つことが重要です。

いま求められるリベラルアーツと読書

 21世紀に必要とされるリベラルアーツは、「20世紀に構築された常識や枠組みから自由になること(liberal)」を目指し、「そのために必要な技能(arts)を身につけていくこと」と捉えることができます。情報技術の発展に伴って、情報へのアクセス機会が拡大したことで、情報を扱う「方法」に価値が移ってきています。21世紀を牽引する人財が有する知性は、情報の過多に囚われず、膨大な情報の活用方法に習熟することに重点を置くことになるでしょう。

 情報の活用方法を含めた広義のリベラルアーツをわたしたちは、「編集的リベラルアーツ」と呼んでいます。知識の獲得を目的とするのではなく、知識を活用して、「問い」を生み、それらの「問い」によって、新たな知識を生み出していくプロセスを繰り返すこと。いわば、連想力や仮説力によって、世界と自分の関係を新たに見出し、更新していく状態を目指します。そして、「編集的リベラルアーツ」にとっては、しかるべき編集プロセスを通過した情報パッケージである本は改めて重要な存在となります。

 

 連想力や暗示力を動かす「アナロジー」、仮説によって世界の可能性を拡張する「アブダクション」、知識の集積モジュールとしての「本」が組み合わさることで、次世代を担う人財の「世界観」「価値軸」「編集力」は深く育まれていくことでしょう。

 

「探究型読書」習慣のすすめ

 書物の力を借りながら、時間の制約を活かして想像力を引き出す読書法が「探究型読書」です。この読書法は以下の3ステップで構成されています。


(1)「読前」:目次読み

 目次や表紙を眺めながら、本文を読み始める前に、自分なりの想像力を働かせることで、読者は受動的な読み手から主体的な本との対話相手へと変身することができます。


(2)「読中」:QAサイクルを回す

 一字一句、詳細に読むのではなく、「読前」に立てた仮説や自分の問題意識を頭に置きながら、文中に散りばめられた「問い=Q」と「答え=A」を追いかけるつもりで、ザクザクとページをめくっていきます。この時に、自分の「問い=Q」と「答え=A」も同時に立ち上がるように意識すると、短時間で大事なポイントが頭に残る形で1冊に目を通すことができます。


(3)「読後」:アナロジカル・シンキング

 本文を読み終えたら、「読前」に書き留めていた仮説を振り返って現在の印象と照らし合わせたり、この1冊から得た情報が「何に似ているか、何と関係がありそうか」というアナロジーを働かせて、自分や周囲の事象との関係を発見していきます。このような(読後の)アナロジカル・シンキングによって、1冊との出会いが格段に豊かなものとなります。


 「本を活用した思索の習慣」を持つことで「世界観」「価値軸」「編集力」は着実に育まれていきます。

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