Season 1   第3講

大いなる文明と小さきものの文化

2020 年12 月12・13日

「生命と文明のあいだ」を考える[AIDA]シーズン1。第3講は2日連続で行われた。
1日目は編集工学研究所のブックサロンスペース本楼にて実施。2日目は全員で松岡座長が館長を務める角川武蔵野ミュージアムを訪れ、隈研吾氏と荒俣宏氏をゲストに迎えた。文明の象徴でもあるミュージアムという場で、生命と建築、文明の関係を問い直す。

 

世界が物質生活に依存するかぎり、
資本主義はそれをいくらでも養分にして肥大していく。
そして文明は、つねに肥大したもののほうに積状化していく。
松岡正剛 千夜千冊 1363
フェルナン・ブローデル『物質文明・経済・資本主義』


物理的には大きくても、あり方としては小さく、
「負けている」と人々が感じられるような建築を作ることはできないだろうか。
隈研吾 『点・線・面』

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 人類がつくりあげた文明は、いまや人類を食い尽くす怪物になろうとしているのか。ダニエル・ベルは『資本主義の文化的矛盾』の中で、「政治が公正を追求することと経済・技術が効率を追求することと、文化が自己実現ないし自己満足を追求することの間には抜き差しならない矛盾が生じてしまう」と指摘した。地球と文明の間の矛盾のみならず、自ら作り上げた文明の深部に潜む矛盾をも乗り越えていかなければならない時代に差し掛かっている。

 隈研吾氏は、大きな文明と小さな文化の抜き差しならない関係を、自然界の物質との対話を繰り返しながら超克しようとしてきた建築家だ。その隈氏が建築を手掛け、松岡座長が館長を務める角川武蔵野ミュージアムを舞台に、無数の書物に囲まれながら人類の軌跡を感じる一日になった。荒俣宏氏を交えての鼎談セッションでは、生命的建築論から魑魅魍魎の世界像まで奔放な情報文明論が繰り広げられ、生命と文明の軋みをほぐしていった。

プログラム

【1日目】 12月12日(土) @編集工学研究所
10:30〜 オープニング
10:50〜 編集工学レクチャー
12:00〜 ハイパー・ザ・レジェンド
13:35〜 クエストリンク
15:30〜 AIDAセッション(全員参加)

【2日目】 12月13日 @角川武蔵野ミュージアム
13:00〜 オープニング
13:40〜 隈研吾 × 松岡正剛 対談セッション
14:40〜 エディットタウンセッション
15:50〜 隈研吾 ソロ講義「生命的建築とは何か」
17:10〜 隈研吾 × 荒俣宏 × 松岡正剛 鼎談セッション「生命と建築、文明の関係を問い直す」(note掲載)

講義風景

角川武蔵野ミュージアム

長年かけて角川武蔵野ミュージアムの構想を一緒に練り上げていった松岡座長、隈氏、荒俣氏が、どのようにコンセプトを作り、形にしていったのか。ミュージアムを歩き体験しながらそのプロセスをリバースエンジニアリングする。本に囲まれた空間は、さながらバーチャルのようだ。

▼3人の鼎談セッションのレポート記事はこちら
隈研吾 × 荒俣宏 × 松岡正剛 鼎談セッション「生命と建築、文明の関係を問い直す」(note掲載)

講義の本棚「角川武蔵野ミュージアムの7冊」

ライブセッションで交わされた議論から、より思索を深めるための参考書籍を、運営チームがピックアップ。
今回は舞台となった角川武蔵野ミュージアムに込められた思想や哲学を紐解く7冊。

Season1_3講「講義の本棚」

『点・線・面』隈研吾(岩波書店)/『負ける建築』隈研吾(岩波現代書店)/『小さな建築』隈研吾(岩波新書)
『日本文化の核心』松岡正剛(講談社現代新書)/『妖怪少年の日々 アラマタ自伝』荒俣宏(KADOKAWA)
『普及版 世界大博物図鑑1』荒俣宏(平凡社)/『本から本へ』松岡正剛(角川ソフィア文庫)

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 ミュージアムの起源は「ムセイオン」だ。アレクサンドリアのムセイオンは世界中の書物を収集し、神のシステムを研究した。古来、ミュージアムは文明の中心であり、生命の研究所でもあったのだ。東所沢にそびえ立つ角川武蔵野ミュージアムは、隈研吾氏本人が「自身の代表作になるはずだ」と語る建築物だ。

 隈氏は『点・線・面』で、建築の「ヴォリューム(量塊)を点・線・面へと解体して、風通しを良くしたい」と語っているが、この建物は石の61面体であり、一つひとつが「点」になっている。石はノイズの多い割肌仕上げで、隣と揃っていない。隈はこの特徴を「連想の自由がある」と表現した。松岡座長が日本文化の特徴として挙げる「小さきもの」や「うつろい」とも通じる考え方だろう。

 ミュージアムの目玉は、「エディットタウン」や「荒俣ワンダー秘宝館」だ。妖怪少年の心を忘れない博物学者・荒俣氏の知が詰まった場でもある。エディットタウンは松岡座長が長年構想した「図書街」が形になった場所の一つで、やはりノイズが多く連想が生まれやすい知の無限回廊だ。

 

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