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[トピックス] 2013年4月11日
[レポート]千夜千冊ナイト・イベントレポート

2013年3月15日、松岡正剛の千夜千冊は1500夜を迎えました。その歴史的なタイミングにあわせて行われたリアルイベント「千夜千冊ナイト」には、100人を超える観衆が訪れ、1500夜達成の瞬間を目の当たりにしました。千夜千冊はスタートから13年たち、知のアーカイブとしてのみならず、各界の所縁をつなげるメディアとしても役割を果たしています。今回のイベントはそのような千夜千冊とともに、これまで併走して関わってくださった人々を招き、ともに記念の場を迎えるという狙いもありました。2004年の1000夜記念から9年ぶりに、新たな拠点であるゴートクジISISビル「本楼」の場で開催された熱気あふれる記念イベントの様子を、記録写真によってお伝えします。

「千夜千冊ナイト」ポスター
"思えば遠くへきたもんだ。ここは人跡未踏の編集番外地…"
デザイン:富山庄太郎

◇ 宵待会 ◇

映像上映・編集部実況ライブ

真夜中に更新されることが多い千夜千冊ですが、千夜千冊のリアルイベントである「千夜千冊ナイト」も夕刻から宵闇に向かって盛りあがりました。開場は午後5時、参加者にとっても編集部のメンバーにとっても、胸騒ぎのする時間のはじまりです。各界の関係者とともに、あらかじめWeb上で出題された30問クイズに正解した30名もイベントに招かれるなど、さまざまな立場から千夜千冊を応援する人々が一同に集う場となりました。

▶▶「千夜千冊の秘密」十夜三問(千夜千冊クイズ)の設問・回答はこちら

初春の夕どき、お祝いモードへとイメージチェンジしたゴートクジISISビル。玄関口の「井寸房」には、各方面から届いたお祝いの花が飾られた。

イベントごとに表情を変える白木の玄関口「井寸房」でお出迎え。参加費は1500夜にちなんで1500円。

30問クイズの正解者に配られたバッチ。出題の難易度によって、赤・青・緑に分けられた。

司会の太田香保と吉村堅樹。二人は編集学校[離]の指導陣でもあり、日ごろから千夜千冊についての出題にもかかわっている。

過去の記念イベントの上映。500冊記念「一人一冊」、1000冊記念「これでダメなら日本は闇よ」の2本が上映された。

過去のイベントについて吉村が質問し、太田が詳細に解説する。13年間の歴史をもつ千夜千冊の歩み、その全貌を知る人は少ない。過去のイベントの雰囲気も、その時代ごとにさまざまな表情をみせた。

こっそり本棚舞台の上段に登って映像ダイジェストを楽しむ松岡。1500夜を迎えてこみ上げる想い。

千夜千冊全集の刊行にご尽力された福原義春さんも駆けつけた。


千夜千冊編集部の実況ライブ、吉村レポーターの突撃インタビューがスタート。ディレクターの石黒壯明、チーフデザイナーの富山庄太郎から千夜千冊アップロードの手順とデザイン上の工夫が明かされる。

千夜千冊初の総合インデックスである「総覧帖」の全編集を担ったチーフエディターの広本旅人から編集方針を解説。キーエディターズ(データ編集チーム)の二人、山崎健司さんと中山有加里さんからは今回のキーワードの一端がヒントとして示される。

ライブ中継のラストは、いよいよ書斎で1500夜目の仕上げの赤字修正にとりかかる松岡にインタビュー。 「あともう少しなんだけどね~」

◇ 当夜会 ◇

1500夜テーマ発表・来場者スピーチ

更新前の最終調整をひととおり終えると、いよいよ1500夜目のアップロード。今回のハイライトシーン「当夜会」のスタートです。最後の赤字修正を終えた松岡正剛が書斎から出てきて「本楼」に登場。ここにいたるまでずっと秘密にされてきた、1500夜目のテーマが『柿本人麻呂』であったことがはじめて明かされました。  
1500夜を達成した松岡への、スタッフからの贈り物は、1500冊分の重みを感じさせる知の帷子(かたびら)。本の表紙をプリントした1500個ぶんのバッチが付いた特製品がプレゼントされました。その後の歓談タイムでは、千夜千冊に縁の深い人々からのお祝いメッセージに加え、このイベントに参加するための関門であった千夜千冊クイズの正解者30名が一人一人紹介されるなど、立場をこえて人々が交歓する場となりました。

「1500夜目には柿本人麻呂を選びました。人麻呂は万葉集や古事記とともに、いつかやらなくてはと思っていた・・」1500夜目のテーマを明かす松岡。決め手は、円空展にいったときに目の当たりにした人麻呂像の衝撃だったという。

「1500夜にいたるまで、いつも何かをリスペクトし続けてきた。ケチを付けるのは簡単だが、それよりも自分のなかのどこかを明け渡したいといつも思っている」千夜千冊スタート時から大切にしてきた想いを語る。

自らの手で編集画面の更新ボタンを押す松岡。
最新のページが1499夜から1500夜目に切り替わると、会場に拍手がわいた。

スタッフが作成した知の帷子(かたびら)。
1500個のバッジで表される1500冊の重み。

1500夜ぶんの重みをまとう(実は本当に重かった・・)。

今回のスペシャルゲストである岡野弘彦さんの乾杯音頭。
現代において柿本人麻呂を体現する岡野さんが、新たな時代にさしかかった千夜千冊プロジェクトのための第一声をあげた。
「松岡さんほど熱い批評をしてくれる人は他にいない。著者としてこの上もなく嬉しいこと。88歳を過ぎたが、この場に参加し、私も"まだまだ"と奮い立った」と岡野さん。

満席の会場は始終、期待の眼差しとともに不思議な緊張感がみなぎっていた。特別な一夜に望む立ち姿。来場者もスタッフもみな真剣そのもの。

「楽しく"考える"ことができる時代、この活動にますます期待したい」。平城遷都1300年記念プロジェクト以来、松岡と活動をともにしている奈良県知事の荒井正吾さん。

「松岡さんの背中を追いかけているがすぐに見えなくなる」千夜千冊の仕組みを応用したWebシステムである「千夜千冊マップ」を開発した国立情報学研究所の高野明彦さん。

「松岡流の知のクリエイティブを模倣した青春時代でした」。青春の想い出とともに、ゴートクジからはじまった新たな編工研への期待を語る、ISISビルのある赤堤2丁目で生まれ育った翻訳家の鴻巣友季子さん。

1492夜『倍音』の著者でもある中村明一さん。「日本は批評が成り立ちにくい国だが、千夜千冊は見えない活動を観測できるようにしてくれる」。中村さんはイベントの後半でもスペシャルゲストとして登場する。

1496夜『ソーシャルメディア進化論』の著者である武田隆さん。「千夜千冊にとり上げられて、歴史に刻まれた実感があった」と語り、自著が千夜千冊に掲載され、社内にもどってスタッフと祝杯をあげたという。

松岡が出演した、フジテレビ『オデッサの階段』のディレクターとして長きにわたり密着取材をした森田と純平さん。「ここまで人間が大好きな人はいない。松岡さんの笑顔にふれた瞬間に番組の成功を確信した」。

1500夜のお祝いとして、三浦史朗さんから贈られたブビンガに添えるローテーブル。思わぬ豪華なプレゼントに喜ぶ松岡。

スピーチタイムの締めは、豪徳寺のISISビルを松岡に紹介した張本人でもある三角屋の三浦史朗さん。「ゴートクジは新たな生産現場になる。松岡さんとともに、この場所からさまざまなモデル作りに取り組みたい」と想いを語った。

◇エンディング◇
1500夜千夜語り・演奏会

夜も深みを増し、イベントはいよいよエンディングにさしかかります。ディレクターチェアが1台だけ舞台上に設置され照明がライトアップ、松岡正剛によるソロパフォーマンスのはじまり。さきほど更新されたばかりの、1500夜目『柿本人麻呂』をその場で読み語りするという、この日かぎりのスペシャルな時間です。千夜千冊の音声メディアである、オーディオWebマガジン「方」の公開収録も兼ねた企画として行われました。
長時間にわたる音声語りが終わると、いよいよフィナーレへ。岡野弘彦さんと中村明一さんが再度登場し、歌と尺八のコラボレーション演奏。テーマは、古代史をゆるがす動乱であった壬申の乱を若くして体験した人麻呂が、近江の荒れ果てた都を通りかかったときに悲痛の思いで詠んだ「近江荒都歌」。岡野さんが人麻呂の長歌のなかで一番すばらしいと強調する『万葉集』の巻一・二十九番歌として収録されているこの歌の唱詠が、すすり泣くような尺八の音に乗ってイベントのラストシーンを飾りました。  
編集工学研究所の新たな活動拠点である「本楼」の場で行われた100人限定のイベント。この小規模ながらとびきり濃密な時間のなかに、来たる千夜千冊の未来の姿がひそかに影向しているようでした。

公開収録は90分におよんだが、千夜千冊史上最長の本文(478行29190文字)は容易には読み切れず、なかばで中断となった。

「一册一声」1500夜スペシャル特典『柿本人麻呂』収録音源
1500夜達成記念「千夜千冊ナイト」での公開収録の音源は、オーディオWebマガジン「方」の4月号の1周年記念特典として、ただいま特別に配信しております。特典をゲットし、1500夜イベントの熱気をぜひ追体験してください。キャンペーンは2013年4月30日まで。この機会をお見逃しなく。

詳細はこちら▶▶ 「方」会員募集・継続のご案内


岡野弘彦さんによる歌の唱詠と、中村明一さんによる尺八の音色が織りなす極上のひととき。人麻呂の旅の一場面がゴートクジ「本楼」の舞台に蘇る。
人麻呂と同じく、若くして悲惨な戦争を体験した岡野さん。特攻部隊の軍事訓練に明け暮れた日々の末に終戦をむかえ、荒廃した心をかかえたまま旅に出た。そのときに近江を訪れ、人麻呂の「近江荒都歌」を繰り返し吟じた。当時21歳だった岡野さんにとって、そのことが最も心の平安となったという。

13年目にして成し遂げた1500夜達成。岡野さんと中村さんによる最高の激励に胸をつまらせ感極まる松岡。

記念撮影。千夜千冊の著者から、かかわりのあった出版業界の方々、クイズの難問に果敢に挑戦し、正答した方々など。当日集った、千夜千冊を応援する人々、多士済々。

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