編集工学研究所

意味と方法の市場へ

編集工学研究所 所長
松岡正剛

方法の提供

20 世紀は「主題の世紀」でした。宇宙から民族まで、戦争から平和まで、環境から健康まで、ありとあらゆる主題が出尽くしたかのようです。その後、これらの大半は情報化され、電子ネットワークを走りまわり、検索トレースの対象になりました。また、商品や人事や流行に付随してビッグデータとして蓄積されました。
21世紀はこれらの情報群を「意味」のために問いなおし、そこに新たな「方法」を組みこむための徹底編集に向かう時代です。国も企業も地方も学校も、情報と知識を編集的に組みなおし、新たな意味と価値をさぐるべく 意味を工学する必要が出てきています。21 世紀は「方法の世紀」なのです。
編集工学はこうした渇望に応えるために生みだされてきました。編集は新聞や雑誌や映画などのメディア用にあるとはかぎりません。社会と市場に絡まっている膨大な情報群から、大小の意味をプロセス別に仕分け、そこから 必要な価値を見いだす方法なのです。

日本のISIS

私は40代の半ばころから、日本の前途には重大な問題が名伏しがたく突きつけられていると感じるようになりました。言葉と技術、社会生活と教育、また経済と文化の関係に、齟齬と矛盾が吹きさらしになっていると見えてきたのです。
きっと飛躍と蓄積のあいだ、計画と制度のあいだに矛盾がたまり、無理と不均衡がおきてきたのです。そのため独自で多様な価値観が 単純化されすぎたり、放置されて、グローバリズムの渦中に 埋没してしまっているのです。
私は日本には、いくつもの「日本という方法」が独特に培われてきたとみなしています。社会と価値の多様性を生かし、編集的プロセスを重視しながらアワセカサネキソイを創発させていくという方法です。これは日本のISISです。相互のInter ScoreをおこしてそこにInteractive Systemを発動させていくという方法です。

仮説する研究所

編集工学研究所は「仮説」をたいへん重視しています。プロジェクトイノベーションも既存の知だけでは生まれません。そのため編集工学は、多領域からの成果を汲み上げ、仮説の力が 社会に何をもたらしてきたのか、 充分な検証を加えてきました。
とくに生命の動的な仕組みに学び、古今東西の歴史の序破急を学習し、文化の潤いに心をひらくことを長年にわたって重視してきました。研究所の旗印は「 生命に学び 、歴史を展き、文化と遊ぶ」なのです。
これまで編集工学研究所は数々の編集技法を開発して、これを社会や市場のために適用し、情報編集力を存分に活用できる多彩な人材を次々に育成してきました。いま、こうしてネットワークされた各所のスーパーエディターたちが、新たな課題に取り組む時代です。
編集工学研究所は、来たるべき「意味の市場」の先端を見据えます。そして、日本が取り残してきた課題を果敢に拾っていきたいと思います。