一方、論理もオブジェと繋げたかった。この号には「論理と物質」と題した特別対話を載せています。中原佑介と中村宏が唯一の対談をした回です。これも画期的でした。
 先ほども言ったように、模型、モデル、軌道とはなんだろう、ケプラーの楕円軌道とはなんだろう。ものが動いていれば、それは軌道と一緒に動いている、そしてそう考えるように人間がなったことは論理でもあるわけです。論理だけがあるわけではなく、そこに物質が動き、質量が動いている。そうすると論理と質量と物質はどこかで繋がっているのではないか。中原さんも中村さんも論理と物質の間、そこにアートを見ようとしていた。
 ここでは、人間が絵を見る行為には特殊性があって、自然や日常を見るようには絵を見ていない。けれど逆に観光地化された地形は絵と同じだ、と言っています。絵として書かれた石も描かれた"モノ"として物の認識に関するけれど、それは絵画の形式の認識であって、実際に石を置いた場合の認識とは別のものになる。難しいタイトルでしたが、これはとても面白い対談になりました。


 
 後半は前号に続いてダ・ヴィンチの特集を入れています。これはぼくの自慢ですが、小野健一にレオナルド・ダ・ヴィンチの『絵画論』における水流の研究として、水のところだけを書いてもらいました。『絵画論』は実現をみていませんが、構想ノートがあった。後半は絵画論であるのに水流の観察ノートになっている。小野健一はそこに注意を促したいというところから入っていますね。



 ダ・ヴィンチがこうしてずっと洪水の研究をしていたことが、ぼくに誰よりもはやくレオモード、流体力学、やがてはストレンジアトラクタ、フラクタルであるとか、カオスなるものに、気をつかせたのだと思います。カオスやフラクタルを知らなくても、自分の関心が何かあれば、掘り下げていったときに必ず現代科学にも宇宙論にも繋がるはずなんですね。小野健一さんは実は物理学者なんです。この小野さんがレオナルドの水流を読む設定をとったわけです。それがかえってよかったのだろうと思いますね。
 でも、当時この特集を頼みに行くと、みんなに驚かれましたね。なぜあなたはぼくを知ったのですか、なぜこのようなことを頼むのですか、と言われた。下村寅太郎は編集者がきたのは10年ぶりだと言っていましたね。特集の最後は「レオナルドとミケランジェロ その不和について」、これは裾分和宏さん、彼は日本で一番心あるレオナルド学者でした。


 
 次のページ。これもかなり珍しい原稿ですが、「花粉学」というものを載せています。当時からぼくは花粉にとても関心をもっていた。花粉とサリンと遺伝子と情報はイコールだと思っているんですね。いずれも時空間を超えている旅人なんですね。花粉症は人を悩ませるものですけれど、花粉がもっている力をわれわれはあなどってはいけない。
 当時、花粉とはなんだろうと勉強中ででしたが、当時の花粉学の第一人者である中村純先生に高橋君経由で原稿を書いてもらいました。
  
 ぼくは"生気象学"というものに関心があった。今はそれがエコロジーというものになってしまったんだけれど、生きた気象というものが重要だと思っていました。そこで2号の「オブジェ・コレクション」の雲をつくるために気象庁で正月の3日間をぼくと一緒に過ごしてくれた気象学者の根本順吉さんが、今度は「世界気象学史序説」と題したものを書いてくれました。これは画期的でしたね。サブタイトルに「環境問題の現状と背景」とありますが、3号が1972年ですので、おそらく日本のメディアでこんなに早く温暖化とか気象異常を取り上げたものはないだろうと思います。



 3号でこのほかに掲載しているのは、リトアニアの詩人オスカー・ウラディスラス・ド・ミロスの「ストルジェへの手紙」、彼のアインシュタイン物理学との出合いから書かれた形而上学詩『アルス・マグナ』の一部ですが、それを橋本綱というぼくの友人が訳出しています。
 それからぼく自身の「自然学曼陀羅」と「場所と屍体」を載せていますね。最後の「精神技術史編年表」は1643年から1771年、マグデブルグの半球からキャベンディッシュの電気重力までと題しています。これこそは『情報の歴史』になっていく作業の第一歩です。
 2号から3号の間は2カ月と短く、順調でした。次回に語る4号は少し間をあけての出版となります。
 
(次回の本談は4号を語ります。)
 
収録撮影:川本聖哉
テキスト編集:仁科哲┼佐藤三奈子
画面構成・デザイン:美柑和俊┼佐藤三奈子
12/12
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